よくある質問

硬膜外ブロックはどんな治療法ですか?

脳から背骨の中を縦に走る太い神経の束が脊髄です。脊髄は硬膜に包まれていて、硬膜の外側には硬膜外腔があります。硬膜外腔には脊髄から枝分かれした脊髄神経が存在しています。枝分かれした神経は馬尾や神経根と呼ばれ、手足につながっています。
硬膜外ブロックは、硬膜外腔に局所麻酔薬を注入して脊髄神経に麻酔をかることで痛みの感覚を脳に伝達する働きを遮断(ブロック)する治療です。

神経ブロックは一時的な痛み止め効果しか得られませんか?

一時的な効果だけでなく、持続していた痛みの緩和も期待できます。痛みを脳に伝える異常な興奮状態を鎮めて痛みを緩和させ、自律神経が麻酔されることで血管が太く拡張して血流が改善し、発痛物質(痛みを起こさせる物質)の排出が促されることで繰り返す痛みを起こしにくくなります。また、神経ブロックは運動神経の異常な興奮も鎮めるため、筋緊張がゆるんで筋肉の痛みも緩和されます。強い痛みや長く続く痛みによる痛みの増強を遮断することで、痛みの悪循環を起こしにくくします。

硬膜外ブロックによる効果が期待できる疾患や症状にはどんなものがありますか?

硬膜外ブロックによる効果が期待できる疾患や症状にはどんなものがありますか?

首 頸椎を通っている脊髄神経から生じる痛み

首の付け根、肩・腕・手の痛み
頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症性神経根症など

腰 腰椎を通っている脊髄神経から生じる痛み

腰、おしり・ふともも・すね・足の痛み
急性腰痛症(ギックリ腰)、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎症性神経根症、腰椎すべり症など

注射の針を刺す場所はどこですか?

肩・腕・手の痛みがある場合、頸部硬膜外ブロックを行います。頸椎の脊髄神経に麻酔をかける必要がありますから、首の付け根の後ろから注射を行います。
おしり・ふともも・すね・足の痛みがある場合は、仙骨部硬膜外ブロックを行います。腰椎の脊髄神経への麻酔は、仙骨(おしりの割れ目の少し上の骨)の下にある仙骨裂孔に注射を行います。

使用する薬剤はどんなものですか?

使用する薬剤はどんなものですか?痛みをとる目的で行う治療ですから、神経に麻酔をかけるリドカインという局所麻酔薬を使います。激しい痛みがあるなど強い炎症が起こっている場合には、デキサメタゾンというステロイドホルモン薬を併用することもあります。まれですが、局所麻酔薬でアレルギー反応を起こすことがありますので、これまでに歯科治療の麻酔で気分が悪くなった・発疹・むくみ・息切れ・血圧低下・動悸などが現れたなどアレルギー反応を起こしたことがある場合には、必ず事前診療で医師にお伝えください。

硬膜外ブロックの治療はどんな流れで行われますか?

硬膜外ブロックの治療はどんな流れで行われますか?まず血圧を測定し、問題がなければ治療を開始します。
X線透視下で行う場合はレントゲン室で治療を行います。
レントゲン台にうつぶせに寝ます。
針を刺す場所を丁寧に消毒します。
治療による痛みを軽減するために局所麻酔薬を皮膚に注射します。チクっとする痛みも軽減できるよう、細い針で注射します。
麻酔が効いてきたら、硬膜外腔に向かって治療用の針を刺して局所麻酔薬を注入します。
肥満や骨の変形、背中を丸められないなど、通常では正確な注射が難しいケースでも、X線透視下ではしっかり確認できるため正確な治療が可能になります。
硬膜外腔に針が入った時や局所麻酔薬注入のタイミングで少し痛みが出るケースがありますが、その際には身体を動かさず、声で医師にお伝えください。
注入が終わったら針を抜き、消毒して絆創膏を貼ります。
ストレッチャーのままリカバリールームにお運びしますので、そちらで30分から1時間ほどお休みいただきます。その後、お身体の状態を確認して問題がなければ、治療効果を医師と確認し、必要があれば今後の治療計画をご相談してご帰宅となります。

所要時間はどのくらいですか?

治療自体は数分ですが、治療後の休息や確認なども含めると、院内滞在時間は1時間半から2時間程度を目安にお考えください。

硬膜外ブロック治療を受けた後、注意することはありますか?

硬膜外ブロック治療を受けた後、注意することはありますか?治療を受けて数分後に、手足が温かくなって驚かれるケースがありますが、これは治療によって血管が拡張して血流が改善していることで起こっているので心配ありません。
注射後は、何度か血圧を測ります。その際でも、それ以外のタイミングでも、気分が悪いなど異常を感じたらすぐに看護師へお伝えください。
休息時間が終了して起き上がった際にふらつきや脱力を感じたら、無理に立ち上がらずに看護師にお声がけください。

帰宅後の注意にはどんなものがありますか?

治療では太い針を用いるため、感染して化膿する可能性があります。それを防ぐために、当日の入浴はできません。
また翌日以降に針を刺した部分の痛み、背中や腰の痛み、発熱などがあった場合には、すぐにご連絡ください。
また、効果の出方や症状がどのくらい改善され、何日くらい効果があったかといったことをメモに残しておくと、次回以降の治療にとても役立ちます。

硬膜外ブロックには合併症がありますか?

医療行為ですから、下記のような合併症が起こる可能性はあります。

一時的な低血圧

一時的なもので必ずもとに戻りますが、低血圧を起こすことがあります。これは血圧を左右する自律神経に麻酔がかかって血管が広がり、血圧が下がるからです。硬膜外ブロックを行う前後には血圧を何度も測ります。また、治療後は血圧が自然に回復するまで横になってお休みいただきます。早ければ30分で、長くても2時間程度でほとんどの場合は血圧が戻ります。大幅に血圧が低下してしまった場合には、血圧を上げる昇圧薬を使って治療することもあります。ただし、その場合も時間が経過することで自然に戻るため、服薬を続ける必要はありません。

一時的な手足の脱力

運動神経に麻酔がかかり、一時的に手足が脱力することがありますが、必ず自然にもとに戻ります。手足に力が入りにくい状態は、治療後、横になって1時間程度で治まります。

局所麻酔薬による中毒

治療を受けて急に、口の周りや舌がしびれる、めまい、頭がくらくらする、耳鳴り、目がくらむ、目がかすむ、手足が痙攣する、気を失うなどの症状を起こすことがあります。こうした症状が現れたら、酸素吸入、点滴などにより局所麻酔薬の分解や排泄を促します。分解されることで自然に回復します。

細菌感染

発生頻度が0.06~0.4%ととてもまれですが、針を刺した部分から細菌が入って化膿する可能性があります。背中が急に痛くなる、発熱、手足のしびれ、麻痺などが現れたら、すぐに当院にご連絡ください。

硬膜外出血

発生頻度0.01~0.05%ですから細菌感染よりさらにまれです。針を刺した後に硬膜外腔にある血管から出血している状態で、急に背中が痛くなる、手足がしびれる、麻痺などを起こします。こうした症状がありましたら、すぐに当院にご連絡ください。

神経ブロックの作用機序とは?

痛みの遮断による痛みの悪循環の抑制→痛みの中枢性感作の抑制交換神経ブロックによる血流増加作用→組織修復の促進抗炎症作用による炎症の抑制などが痛みの抑制に関与しています。

神経ブロックの治療がどうして必要なのでしょうか?

内服薬で高い鎮痛効果が得られ、満足度の高いものがないからです。多くの方が薬は効かないと来院してくるのが現実です。内服薬のみで対処すると種類と量ばかりが増えます。量を倍にしても効果は倍になりません。副作用による、ふらつき、眠気ばかり出ます。脊椎疾患では最初から神経ブロックの治療を選択した方が良いです。神経ブロックの場合、注射薬はすぐに代謝されてしまうので体内で留まっている時間は短く、基本的に副作用は考えなくて大丈夫です。

どういった疾患に効くのでしょうか?

詳しくは適応疾患のコンテンツをご参照ください。神経痛が関連する疾患が良い適応だと思います。当院では脊椎疾患、帯状疱疹、三伹神経痛に対して施行しております。
たとえば‥

  • ヘルニアの坐骨神経痛や脊柱管狭窄症などの歩行障害、慢性的な腰痛などに神経ブロックはよく効きます。
  • 帯状疱疹にかかったら早いうちに神経ブロックの治療をした方が後遺症を少なくできます。
  • 三伹神経痛は高周波熱凝固術を行うことで痛みから解放されます。

ブロック注射は痛いのでしょうか?

神経ブロックの種類によります。神経に当てないブロック(硬膜外ブロック、腰神経叢ブロック、星状神経節ブロック)は採血程度の痛みですと説明しております。神経に当てるブロック(神経根ブロック、三伹神経ブロック)は多かれ少なかれ痛みはあります。最初は痛くないブロックを選択しております。一般に皮膚は痛みを感じる組織ですが、皮下組織に入ると痛みはありません。靭帯や骨膜は痛みを感じますが、耐え難い苦痛はないです。どのブロックも薬液が入ると響く感じがあると思います。初めての方は緊張して受けておりますが、終わった後に感想を聞いてみるとほとんどの方が痛みはそれほどでもなかったとお答えになります。

麻酔とは違うのでしょうか?

神経ブロックは一時的な痛み止めの手段ではなく治療です。れは血流を良くしたり、神経の炎症を引かせる効果があるからです。通常、薬液は1時間程度で代謝されてしまいますが、効果はそれ以降も続きます。効果は人それぞれです。ぎっくり腰などは治ってしまうことも多いです。

神経ブロックのできない人は?

神経ブロックは圧迫止血ができない深部部位への注射になります。抗血小板薬、抗凝固薬など、いわゆる血液をサラサラにする薬を服用している人は、施行できる神経ブロックは大きく制限されてしまいます。これは神経ブロックの最大の弱点です。特に、高齢者は脳伷塞、心房細動などの不整脈、心臓病などの治療でこの種の薬を服用していることが多く、場合によっては休薬ができないこともあります。服用中の方は主治医の先生とよく相談していただく必要があります。

神経ブロックの治療は他院で受けましたが、効果がありませんでした。

  • 受けた治療は神経ブロックだったのか。
  • 神経ブロックは神経のある場所に注射する。痛い場所に打つわけでなない。
  • 神経ブロックはきちんと成功していなければ意味がない。

まず、受けた治療が本当に神経ブロックだったのか確認が必要です。ブロックという言葉は多用されますが、神経ブロックを指しているとは限りません。トリガーポイントをブロックと誤解している方もいらっしゃいます。神経ブロックは通常針を刺す場所は1カ所であり、痛い場所に注射するのではなく神経のある場所に注射します。また、ブロック後は安静時間があるのが普通です。次に、神経ブロックが行われている場合、それが成功しているかが問題です。神経が薬液に浸らない限り効果は出ません。せっかく施行しても適切に施行できていなければ全く効果がありません。当院では必ず薬液の広がりを画像で確認し、臨床所見も確認しております。他院で施行して効果のなかった同じブロックを当院でやり直すと効果がでる場合は多々あります。特に整形外科で行われた仙骨硬膜外ブロックは不成功であることが多いです。神経ブロックは成功しているが症状の改善が乏しい場合、これは診療で見極める必要があります。ブロックの種類を変えてみたり、場合によっては手術適応になることもあります。何の治療を受けたかわからない場合、診療明細をお持ちいただけるとよろしいかと思います。

超音波装置(エコー)を使用した神経根ブロックを受けました。

  • 超音波ガイド下の神経根ブロックはX線透視下の神経根ブロックは別物と考える。

近年、高解像度の超音波装置が安くなり、導入する医療機関が増えました。もちろん、当院にもあります。手軽に超音波ガイド下の神経根ブロックが行われるようになりましたが、X線透視下で行われる神経根ブロックとは別物と考えた方が良いです。これは、造影剤を使用し薬液の広がりをレントゲンで比較すると明らかなのですが、超音波ガイド下で行う神経根ブロックの場合、ブロックしている部位が透視下で行う場合よりも末梢になるためです。骨は超音波を強く跳ね返すので中枢よりでは骨の下で画像を映せず、神経がはっきりと見える末梢の部分でしかブロックできないことによります。また、超音波下では薬液の広がりは限られた範囲しか見えません。超音波ガイド下で効果がなかった場合でもX線透視下では効果が得られることが多いことは、どちらの方法にも精通している先生方の間ではよく知られていることで、ペインクリニック学会でもたびたび取り上げられるテーマです。現時点では神経根ブロックはX線透視下で行うのが一番治療効果が高く、確実です。

神経ブロックは手術の代わりですか?

神経ブロックは手術の代わりになるものではありませんが、神経ブロックで痛みが解決することは多々あります。手術をしなくてはならないケース、手術が強く勧められるケースはあります。当院では手術適応と思われるものに関しては積極的に勧めております。

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TEL:048-650-1717